きもの専門店の業績の明暗を分けるもの(3)

いつも読んでいただきありがとうございます。
 
4月16日(火)に顧問をさせていただいています全国きものスタイリスト協会」主催のきものスタイリスト全国大会」に招かれて講演をさせて頂きました。
その際に行われた全国トップの「きものスタイリスト」のスピーチを聴いて、きもの事業の業績の明暗を分けるものが分かりましたので、3回に渡って書いています。
 
<3.個人プレイからチームワークへの変化>
今回の受賞者の「神セブン」の方々のスピーチを聞いてもう一つ気が付くのが、皆さんが口を揃えて「自分の力ではない」「周囲の方たちの援助のおかげ」と同じことを言うことです。
それは最初は謙遜から出る言葉だろうと思いました。
しかしそれは「神セブン」に個別に話を聴くと違っていました。
「自分の力ではない」「周囲のおかげ」と言う言葉は、本当に先輩や同僚に助けてもらっていることが分かります。
 
昔からきもの販売の仕事はとても複雑なため、その修得には長い時間をかけて1から10までの業務を一人で出来るようになる事を目指す仕事でした。
しかし「神セブン」を輩出する企業では、複雑なきものの仕事の分業化を進め、チームで連携しながらお客様対応しているのです。
長年あたりまえとされていた「個人プレイ」の仕事が「チームワーク」に変化しているのです。
 
振りかえると10年以前のきもの販売の現場は「個人プレイ」の何物でもありませんでした。
スタッフみんなが弱肉強食のライバルでお互い助け合う事はありませんでした
さらにきものの仕事は1から10までの仕事を長い時間をかけてすべて一人で出来るようになる事を求められる仕事です。
仕事の覚え方も先輩や同僚の様子を見て習うと言う職人的な教育方法の仕事だったのです。
ただ、先輩も同僚もみんながライバルなので積極的には誰も教えてくれない風土がありました。
ですから当然、きものの仕事は人が育ちにくく離職率も高い人気の無い仕事だったのです。
しかし「神セブン」の受賞コメントからわかるのが、受賞企業はそんな「個人プレイ」の風土や仕事の形を「チームワーク」に変化させることに成功させた企業でした。
 
今回の「神セブン」の特徴のもうひとつは受賞者が若いと言う事。
ようやくきものの仕事も若返りが進んできています。
しかしその背景にも「個人プレイ」を辞め、複雑な着物の業務の分業化やチームワークを進めることで現場で活躍するまでの育成スピードが速くなっていることの証かと思います。
そして教育の仕方も先輩の背中を見て覚えるような旧態依然のやり方ではなく、マニュアルが整備されていますし、お互いがライバルでは無く、仲間としてスタッフ同士が教えあう風土がそこには存在するのです。
「おかげさまの心」が新しいきもの業界を創っていくのですね。