<6>なぜあの呉服屋は100年も続く事が出来ているのか?「非常時と不況期の持続的経営戦略」

8回シリーズでコラムを書いています。

<6>なぜあの呉服屋は100年も続く事が出来ているのか?「非常時と不況期の持続的経営戦略」

 

<家賃を払わない>

 

多くの事業者は好景気や市場成長期には市場拡大の為にテナントを借りてどんどん出店します。
しかし100年企業も市場の成長期にはそうするでしょうが、100年企業の少し違うのが不景気や衰退期に備えて本店を設け、そこを不動産で持つ事でしょう。

 

コンサルの世界では「出店は麻薬」と言われています。
「お店を出せば売り上げは上がる」そんな麻薬です。
特に市場の成長期や好景気には本当に面白いようにお店の出店と共に売り上げは上がるものです。
ですから事業を加速させるためにはスピーディに出店できるテナントを借りる事になります。

その際に多くの経営者は「もしもの場合でもテナントだからいつでも返せる」と考えて出店を進めます。
それはプロのコンサルの僕が見ても、とてもまともな経営判断だと思います。
ただし当然のように成長した市場は必ず衰退しますし、好景気は長くは続きません。
しかし急には麻薬はやめられないように、多くの経営者が実際にそんな立場になると出店をやめられないようです。
資金繰りの為には今の売り上げが必要だったり、社員を解雇したくなかったり、退店コストが捻出できなかったりします。
しかし、それ以上に今まで作り上げた作品(成長企業)を壊してしまうのは、あまりにも無念すぎる事も大きいのです。

 

それに対して呉服店や100年企業はどうでしょうか。
多くの呉服店や100年企業は一般的なチェーン店などとは違い、地域に長く根差した「本店」を持っています。
そしてその本店は地域に長く根差すためにテナントではなく不動産で所有しています。
100年企業でも市場の成長期や好景気には周辺地域にテナント出店する事もありますが、情勢の変化に合わせていつでも家賃のかからない本店だけに戻して営業をする用意が出来ているのです。

 

僕のコンサルティング先様では必ず地域に根差した本店を不動産で持つ事を推奨していますし、その本店を徹底的にブランディングする戦略で持続的に成長できる事業を進めていただいています。
さらに今回の様な非常事態で分かるのは、本店と言う帰れる原点がある事は、何よりも経営者や社員の心の大きな支えとなっていると言う事が大きいです。

 

そして今、この大不況かつ非常事態だからこそ「家賃を払わないビジネス」が注目されています。
不動産を持つ僕のコンサルティング先様でも着々とそのビジネスを始める準備をしています。
それは「家賃を払う」のではなく、逆に「家賃をもらう」。そんなビジネスなのです。

 

今、呉服店様に取り組んでいただこうとしてる「家賃をもらう」ビジネスの一例に「シェアサロン」があります。
この「シェアサロン」は、フリーの美容師にこちらで設備した美容室をレンタルしてあげる事業です。
実は今回の非常事態宣言で多くの美容師が職を失っています。
そんな職を失ったフリーの美容師に美容室を貸す事で呉服店が美容師救済の支援に乗り出そうとしているのです。
不動産を持っている呉服店にとって余った不動産の有効活用になる上、呉服と親和性の高い美容事業を家賃も人件費もかけずに内製化してしまうのです。
さらに美容師救済と言う社会的意義もあります。一石二鳥、いや、三鳥。
こんなしたたかな考えを持てる呉服店だから100年生き延びれるのもうなずけます。

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