<7>なぜあの呉服屋は100年も続く事が出来ているのか?「非常時と不況期の持続的経営戦略」

8回シリーズでコラムを書いています。

<7>なぜあの呉服屋は100年も続く事が出来ているのか?「非常時と不況期の持続的経営戦略」

 

<人を雇用しない>

 

これが100年企業の5つめの最後のノウハウになります。
市場の成長期や好景気の時には、前の章でも書いたように経営者は出店を進めます。
出店を進めると言う事は、それに合わせて人を雇用すると言う事になります。
これは至極当たり前な事とだと思います。

 

ただ会社が倒産する原因の多くは市場が衰退したり不況になったりした際に、増やした在庫の商品が重荷になったり増やしたお店の家賃が重荷になったり、そして増やした店の数だけの人の給料が重荷になったりして倒産するものです。
ですからチェーン店を始めとする出店を志す多くの企業は正規社員ではなく、市場衰退や不況や非常事態の際に解雇しやすいアルバイトやパートを使うと言う判断を多くの経営者がするはずです。
これはこれで持続的経営のためのリスク管理の上で大切なノウハウかと思います。

 

しかし不思議な事に、チェーン店以外の呉服店や100年企業はパートやアルバイトをあまり使おうとはしません。
ほぼ正規社員での会社経営にこだわる傾向が強いです。
そのためなのでしょう、多くの呉服店や100年企業の従業員の勤務年数はとても長く、従業員定着率も高いのが特徴と思います。
当然、従業員のスキルも高く会社ロイヤリティも高いはずです。
確かにパートやアルバイトを採用して急激に事業拡大する事は目先の売り上げに寄与するかもしれませんが、正直それはお店の人的なサービスの品質を犠牲にしてお店のブランドを落とすリスクが大きい事だと100年企業の経営者は考えるのでしょう。
もしかすると100年企業は提供する「商品」の品質以上に、それを提供する「人」の品質を大切に考えるのかもしれません。
そういう意味で100年企業は簡単には人を雇用しないのです。

 

ただ多くの企業が抱える人材不足問題同様に、私のコンサルティング先様の呉服店でも事業拡大して行く上では人手は足りません。
そこで私のコンサルティング先様では雇用して内製で事業を回すのではなく、アウトソーシング(外注)する事で事業の効率を上げています。
一例をあげると、多くの呉服店では先に書いた毎月開催されるイベントでは、お店側は優良顧客の集客と商品紹介に専念し、会場の商品陳列や販売業務などのイベントの売り場運営を問屋さんやメーカーさんにアウトソーシングしているところが多いです。

 

また、僕のコンサルティング先様の振袖専門店では自社の直営店で振袖を拡販するのではなく、全国の美容室を販売代理店組織化し、振袖レンタルの拡販をアウトソーシングしています。

 

さらに、僕のコンサルティング先様の美容事業者にはカメラマンのいない写真館を立ち上げていただきました。
これはどう言う事かと言うと、スタジオと衣装を会社側が準備し、撮影は全て会社に登録しているフリーのプロカメラマンにアウトソーシングしているのです。

 

もうひとつ、先の章でも書きました僕のコンサルティング先様が立ち上げようとしている「シェアサロン」の試みも、自社で美容師を雇用して美容室を展開するのではなく、美容室設備だけをこちらで準備して、美容師は全てフリーの美容師が店子(個人事業主)となり施術すると言うアウトソーシング発想の事業なのです。

 

100年企業や呉服店は事業拡大のために無理な雇用をするよりも、このように積極的にアウトソーシング出来るところはアウトソーシングすると言う経営手段を選ぶのです。

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