銀だこの「分かち合い」戦略

~分かち合う100年企業の戦略~

 

先日放送された「坂上&指原のつぶれない店」で紹介されていましたが、銀だこの「間貸し戦略」はあっぱれでした。

https://news.mynavi.jp/article/20200712-1140251/

この戦略は同じ飲食事業者(ライバルにもなりえる事業者)に銀だこの一角を間貸しするというもの。

100年企業研究会の僕としては、この戦略は100年企業が当たり前に行っている戦略だったので、コロナ禍の現在に実施された事例としてとても参考になりました。

 

たこ焼きチェーン大手の銀だこはコロナ禍に大きく業績ダウンしました。
当初たこ焼きはテイクアウト食なので、僕的には影響は少ないかと思っていましたが、そうではなかったのですね。
まあ、考えてみれば銀だこは商業施設に出店する戦略をとっていますからすべての商業施設はコロナ禍では休業していましたのでそれは厳しいですよね。
家賃負担も大きい一等地を陣取って商売する多くの一等地戦略をとっていた事業者はこのコロナは大打撃でした。

そして残された商業施設立地以外のロードサイド店舗は営業できていましたが、コロナ禍ではたこ焼きのような「間食」よりもランチなどの「食事ニーズ」の方が高く、ロードサイド店でも苦戦していたそうです。
非常事態にはとにかく人は「食事」の確保なんですね。

 

そこで普通の経営者なら自社で何とか食事メニューを提供しようと考えがちですよね。
しかしそれはそんなに簡単な事ではありません。
そのための新たなノウハウ構築、新たな設備投資、新たな人材育成などなど、難しい問題が山ほどあります。
そして例え突貫で食事メニューが提供できるようになったとしても、その場当たり的に提供する食事メニューは今の舌の肥えた消費者のハートをつかむはずはありませんよね。
むしろ消費者をがっかりさせて自社のブランドを落としてしまうリスクすらあります。
内製化する事が裏目に出るリスクの方が高いのです。

 

しかしここであっぱれなのが、銀だこの経営判断でした。
内製化することにこだわらず、いっそノウハウも設備も人材も持っている他事業者に間貸しをして収益を上げると言う考え方です。
理屈では圧倒的にそちらの方が早いですし投資も少ないのです。

 

しかし過去の成功体験を持っているチェーン店企業ならこの考え方は非常識の何物でもありません。
チェーン店として大きくなってしまった会社が反対意見の多く出る役員会を経て判断できる考え方ではありません。
銀だこの佐瀬社長が英断しトップダウンで行った施策なのでしょうね。
この英断が吉と出るか凶と出るかは分かりませんが、この試みはあっぱれだと思います。

 

しかし現代のビジネスにおいて非常識なこんな考え方も、実は100年企業ではあたりまえとっている戦略なのです。
今回の「間貸し」のようなアウトソーシング戦略は100年企業ではむしろ積極的に行っているのです。
100年企業では普段から本来なら内製化した方が収益が上がる業務をお取引先様へ積極的にアウトソーシングしています。
また、普段から異業種との交流を行い積極的にタイアップで相乗効果の上がる事業を行っています。
急成長するチェーン事業はとかくすべてを自分の収益にしてしまいます。
それは独り占めする「イナゴ商法」とも呼ばれています。
100年企業の考え方はそうではなく分け合う発想です。
100年企業は他の事業者と利益を分け合い、他の事業者と共に歩み相乗効果を生み出そうと言う考え方が100年生き延びる企業には根強くあるのです。
地域社会や業界で助け合う。そして分け合う。
そんな考え方が持続的経営のためにはとても必要なのですね。

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