見せ方でこうも変わる!

~見せ方でこうも変わる~
コロナ禍においてビジネスはどんどん変化せざるを得なくなっていますね。
いや、むしろこのコロナのチャンスはスクラップ&ビルドで事業を更新させる絶好のチャンスと前向きにとらえる方がツキを呼び込む経営が出来るのでしょう。
 
ところでそんなスクラップ&ビルドをより身近に感じられるのは飲食店かと思います。
激戦の飲食業界では出店と閉店のスピードが本当に早く、僕自身も特定のお店を定点観測をさせていただきその試行錯誤の姿を勉強させていただくことが多いです。
 
先日訪れた名古屋の大須にあるスガキヤの店舗なども、ものすごいスピードで試行錯誤が行われているのが分かります。
先日大須を訪れた際にオープンしていたのはスガキヤの新業態の「はね天」と言う蕎麦屋でした。
格安に手打ちそばと天ぷらが味わえるファーストフード業態です。
この業態は関東圏では既に「ゆで太郎」や「いわもとQ」などのチェーンが成功を収めている業態です。
名古屋の人にとって蕎麦はまだまだなじみがなく、マーケットはこれからと見ての事業開発なのでしょうか。
 
しかしこの場所は昨年末までは同じスガキヤのテスト業態で「天ぷらスガキヤ」と言う業態でした。
格安に揚げたての天ぷらを食べられるファーストフード業態だったのです。
画期的な試みがたくさん盛り込まれたお店で、僕も2年前のオープンの際には視察に訪れていました。
このビジネスモデルの原点は福岡にある格安に天婦羅定食を食べさせる人気店の「天婦羅処ひらお」です。
このビジネスモデルは多くの飲食チェーンが真似てこの数年来展開されてきたものですね。
スガキヤも同様に天婦羅業態に参入してみたのですが、少し早すぎたセルフ化のシステム導入があだになったのか、長くは続く事が出来ませんでした。
 
ところで、残念ながら今回の蕎麦業態も天婦羅業態同様に失礼ながら長く続くことはなさそうとプロのコンサルタントの目線としては見ます。
確かに立地は飛び切り良い立地です。
業態も実績があるモデルを再現したものです。
オペレーションのシステムも最新のものです。
価格も納得できる設定になっています。
このように営業してゆくには条件は完璧に揃っています。
それでも僕の見立ては天婦羅業態に続いてこの蕎麦業態もうまくいかないのではと思います。
それはなぜでしょう?
 
それはスガキヤの天婦羅業態も蕎麦業態も共に「美味しそう」が足りないからです。
これは出てくる食事が美味しくないと言う意味ではありません。
逆にとてもおいしく、この値段で出せるのか!と驚かされました。
しかし「美味しそう」が足りないのでなにかもの足りなく、なにか味気ないのでもう一度行こうとは思えないのです。
 
美味しそうに見せる仕掛けの一番ポピュラーな方法は作るプロセスを見せる事です。
これは飲食店では鉄板の定石です。
しかしスガキヤの天婦羅業態も蕎麦業態も、あえて作るプロセスを見せないような店のつくりになっています。
 
なぜそんな判断になってしまったのか?
それは時代の流れで求められる「効率化」や「生産性向上」に落とし穴があるようです。
 
飲食店で生産性向上を進めると必ず取り組むのが製造プロセスの効率化です。
大手の外食チェーンは効率化の為にこのプロセスをセントラルキッチンにしたり未経験のアルバイトでも出来るように作業の簡略化したりします。
また最近となってはセルフ化のために自動化を進める事で少人化を試みている飲食店も多いです。
全てはお客様に食品を安く提供できるようにする製造プロセスを簡略化する努力です。
しかし本来この製造プロセスはお客様にとって「美味しそう」に見せるためにとても大切なものです。
業界ではこれを「シズル感」と呼び、行列を作るお店は必ずと言ってよいほど製造するプロセスをお客様にお見せする演出をします。
しかし効率化や生産成向上ばかりに目が行ってしまうとここが置き去りにされてしまうことが今回のスガキヤの例のようにままにあるようです。
 
美味しそうに見せる手法の大切さは皆様もよくご存じの丸亀製麺でも話題になった手法です。
丸亀製麺は店内でうどん製造を一から行う珍しいチェーン店です。
丸亀製麺が大きく伸びた秘訣はこの見せる製造プロセスが戦略にあったからと言われています。
しかしその丸亀製麺もお客様が増えてくると次第に合理化のために製造に関する機材は奥に奥にと追いやられていったそうです。
そしてこれは有名な話ですが、創業原点の「見せるプロセス」をもう一度原点に返って復活させて丸亀製麺をV字回復させたのがたのがUSJのもと仕掛け人の森岡さんでした。
 
セルフ化、自動化、デジタル化、いろいろ言われていますが、しょせんそれを利用するのは人間です。
人間の心がどう感じるかが最後は一番大切。
効率化に熱くなって一番大切な人間の心が置き去りにならないようにしたいものです。

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